ビザ発給に見るインバウンド傾向と対策

 昨年、英コンサルティング会社の発表によれば、日本がビザなしで渡航できる国・地域の数が最も多い国と発表された。しかし、実は日本がビザなしで渡航を受け入れている国・地域は68にとどまっているという。ビザ発給数が多くなれば多くなるほど日本が訪日外国人の受け入れに積極的になっていることを意味するが、その数字から読み取れる今後のインバウンド傾向とそれに対する対策を考える。

 2018年のビザ発給数は前年比18.5%増の695万2804件で、過去最高になったと外務省が発表した。2017年が前年比9%増の586万9012件だったので、2018年は2015年以来の大幅な増加だったといえる。
現在、日本は68の国と地域の人々に対して短期滞在ビザを免除している。訪日客の多いところでいえば、韓国、台湾、香港、アメリカ、オーストラリア、タイ、イギリス、フランス、カナダなどだ。その中で、もっとも訪日客の多い中国は、ビザが必要となっている。


中国のビザ発給件数は前年比21%増
 そもそも初めての個人観光ビザが中国国籍者に発給されたのは2009年とわずか10年前のことだった。その年の訪日中国人数は100万6085人で、全体で3位だった。その後、発給要件の緩和や数次ビザの発給開始などで、発給件数は増え、訪日客も2015年には499万3689人と爆発的に増えた。この時点で訪日客全体の1位に躍り出るとその後はその地位を譲っていない。
2018年の訪日中国人数は838万0034人、同年の中国国籍者に対するビザ発給数は前年比21%増の544万7097件で、全体の8割を占めた。なお、訪日数と異なるのは数次ビザ利用者もいるからだ。


堅調なフィリピン、成長著しいベトナム、インド、ロシア
 ビザ発給数で中国の次に多いのがフィリピン。中国とは桁が違うが、前年比6.8%増の34万7816件で2014年から2位につけている。フィリピンも発給要件の緩和などもあり、訪日客数が大きく伸びている市場で、2018年は初めて50万人を突破した。
3位は前年から一つあげたベトナム、前年比26.4%増の28万6917件だった。ベトナムの場合は、中国やフィリピンと比べて短期滞在が少なく、就業や留学が多いのが特徴だ。
また、インドやロシアも訪日客数が前年比20%台の伸びを示している成長市場で、毎年行われているビザ発給要件の緩和の好影響が出ている。モンゴルとネパールはトップ10に初めて入ったが、ネパールもベトナムのように短期滞在よりも、留学や家族訪問などが多いのが特徴だ。
このように、ビザ発給要件の緩和は訪日数の増加をもたらすことが多い。今年もすでに1月には中国やインドで申請手続きの簡素化や数次ビザの発給対象者の拡大、2月にはコロンビア、4月にはカタールで数次ビザ導入などの措置があった。


出典:やまとごころ.jp(最終閲覧日:2015年5月14日)https://www.yamatogokoro.jp/inbound_data/31918/

まとめ
 自分たち日本人が海外に行く際には気にならないビザだが、訪日外国人にとっては一つの大きな課題となる。やはり注目すべきは発給数が増加し続けている点だろう。18.5%増はインバウンド需要が増加し続けている証左となる。また、個人観光ビザが発給されたわずか10年の間に、爆発的に増加している中国の動向が、今後のインバウンド需要を左右することは間違いない。訪日外国人にとって、ビザが必要ということは、自国で訪日を夢見ながら一定期間時間を過ごすことを意味する。ビザ発給を待ちながら、より良い訪日観光を可能にするために情報収集は必至で、訪日観光客の求める情報の提供が、これ以上ないインバウンド対策となる。13億を超える大きなパイを持った中国向けマーケティングには、この“旅マエ”のアプローチが勝敗を分けるといっても過言ではないだろう。

【参考資料】
朝日新聞DIGITAL(最終閲覧日:2015年5月14日)
 https://www.cnn.co.jp/travel/35126762.html
CNN.co.jp(最終閲覧日:2015年5月14日)
https://www.cnn.co.jp/travel/35126762.html


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