日本人が海外での観光する際、一か所もしくは拠点付近にとどまり入国と出国は同じ空港を利用しますが、テレビで目にする訪日外国人へのインタビューで「貴方はどこを観光しますか?」の問いに「大阪~名古屋を通って○○」を観光します。と、数県にまたがって日本を横断もしくは縦断する観光プランを耳にすることがあります。訪日外国人は空港の利用方法も日本人とは違うようです。
拠点が異なる空港を利用することによって、どのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。改めてここで確認することでマーケティングのヒントになることでしょう。
■「オープンジョー」とは?
オープンジョーとは、往路と復路の異なる地点の航空券を意味します。転じて、こうした出発地点と終了地点が異なるルートの旅行形態を指します。和訳すると「開いた顎」という意味になりますが、航路がそのような形になることからこのように呼ばれています。
途中に複数の目的地を設けて、その目的地と目的地の間の移動には飛行機以外の交通手段を利用する場合が想定されています。目的地と目的地の間の移動も飛行機でまかなう場合は「周遊」に分類され、オープンジョーとはみなされません。
複数都市を訪問
オープンジョーには、次の2つの種類があります。
1. シングルオープンジョー
往路と復路の発着地のうち、いずれか片方が別地点となる航空券を指します。
(例1)羽田→フランス→成田
(例2)成田→北京→<北京から天津まで中国国内を鉄道で移動>→天津→成田2.ダブルオープンジョー
往路と復路の発着地が別の地点(空港)となる航空券を指します。
(例)羽田→首都国際空港(北京)→浦東(上海)→関空
オープンジョーと周遊の違い
周遊は複数の都市をめぐる旅行形態を指します。オープンジョーと似ていますが、周遊の場合は都市間の移動をすべて飛行機でまかないます。
(例)成田→(飛行機)→パリ→(飛行機)→ロンドン→(飛行機) →成田
オープンジョーのメリット・デメリット
オープンジョーにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
ここでは、観光業に関わる事業を提供している側と観光客のそれぞれの視点に分けて解説します。
事業者
事業者にとってのオープンジョーのメリットは、集客地の拡大にあります。オープンジョーを利用した観光客は複数の地域に滞在するため、それぞれの地でインバウンド消費が期待できる点といえます。
一方で、観光客が単一の目的地に滞在する日数は短くなる可能性もあります。短期間で消費意欲を引き立たせなければならないという課題に直面するでしょう。
観光客
観光客にとってのオープンジョーのメリットは、一回の旅行で航空券に費やすコストを抑えながら、複数の目的地を訪れることができる点です。
ただし、経路では飛行機以外の交通手段を利用しなければなりません。例えば遅延などトラブルに見舞われると、経由地での次の移動手段に間に合わないこともあります。円滑に移動できないリスクを引き受ける必要があると言えるでしょう。オープンジョーを利用した旅行では、通常の旅行以上に余裕をもって計画し行動することが必要です。
オープンジョーとインバウンドの関係性
日本各地を目的地としたオープンジョーについて考えてみます。
この場合、オープンジョーは訪日外国人と観光関連の事業者の双方にとってメリットがあります。訪日外国人はオープンジョーを利用することにより日本全国を周遊できますし、事業者目線で言えば訪日外国人による売上拡大のチャンスといえるでしょう。
オープンジョーはインバウンド市場にとってもメリット
オープンジョーを利用して海外から日本を訪れた場合、入国地点から出国地点まで移動する必要があります。その途中では、日本国内の各地を観光する可能性が高いでしょう。こうした移動と滞在により、訪日外国人の旅行消費額も増大する可能性が高くなります。
例えば以下のルートでは、東京観光、大阪観光の双方に予算を立てて観光するはずです。
(例)中国→東京→(新幹線)→大阪→中国
ショッピングや宿泊体験、食事、レジャー施設と様々な集客ポイントがありますが、単純にその機会が2倍になると考えられます。
場合によっては中間地点の箱根や静岡、名古屋での観光も期待できるでしょう。インバウンド活用の事例
訪日ラボ: (最終閲覧日:2019年5月23日)
続いて実際にオープンジョーを取り入れたインバウンド施策の事例をご紹介します。
「航空+JR」訪⽇旅⾏商品のラインナップ
東⽇本旅客鉄道株式会社と株式会社びゅうトラベルサービスは、訪⽇外国⼈旅⾏者向けに、国際航空会社と連携した「航空+JR」の⽴体観光型の商品を発売しています。
2017年8月に新たな施策として、台湾に拠点を置く LCCタイガーエア台湾と連携し、訪⽇旅⾏商品をリリースしました。
同施策は残念ながら2018年2月までの販売をもって終了していますが、台湾から航空機を利⽤する訪日外国人を対象に南北海道や東北から東⽇本エリア、さらには北陸エリアを、鉄道利用により周遊する旅⾏商品を提供していました。
このプランでは函館または仙台から入国して、「JR東日本・南北海道レールパス」または「JR EAST PASS 東北」を利用して南北海道や東北エリアを周遊後、羽田空港または成田空港から出国します。(入出国地は逆も可)
また同様の旅行商品はもう一つあり、こちらは羽田空港または成田から入国して、「北陸アーチパス」を利用して北陸エリアを周遊後、関空から出国します(同じく入出国地は逆も可)。
タイガーエア台湾のオープンジョーの利用で異なる地点からの航空便利用を前提に、鉄道で日本国内を周遊してもらうことを目的として販売された商品です。
茨城空港
茨城空港は、日本初の格安航空会社(LCC)対応型空港です。
インバウンド施策として積極的にアジアのLCCを誘致しています。茨城空港では、茨城空港に入国し静岡空港から出国するオープンジョーを利用する台湾からの旅行客が多いのが特徴です。
例えば、富士山、東京、茨城を回るコースなど、茨城空港の利点を活かしたプロモーション施策を講じています。また、混雑する羽田空港や成田空港でなく、茨城空港を使う魅力を旅行会社へアピールし、広報費用やバス代など一定の支援措置を検討するなど、インバウンド施策を取っています。
https://honichi.com/news/2019/05/23/openjaw/
まとめ
いかがでしたでしょうか。
日本では聞きなれない「オープンジョー」。有名都市だけではなく地方にも訪日客の足が伸びる理由はここにも隠されていたようです。これからますますリピーターの訪日外国人が訪れ、独自の目線で新規開拓を楽しむことも旅行の醍醐味となっていくでしょう。まだないルートを確実な集客で導くことが、今後インバウンド需要拡大の大きなカギとなるでしょう。
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