5月11日付の日本経済新聞で近年増加する訪日観光客に向けた多言語案内板の誤訳が報じられた。2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博へ向けて訪日観光客が急増する中、多言語対応の表記を公共の場でよく目にするようになってきた。ところが、訪日観光客の利便性を考えて行った多言語化が、誤訳によってむしろイメージダウンにつながりかねないと警鐘を鳴らしている。
訪日外国人向けの観光案内で誤訳が相次いで見つかっている。インターネットで利用できる無料の翻訳サービスや翻訳ソフトに頼るなど専門家のチェックを受けていないことが背景にある。意味が伝わらないだけでなく、不快な気持ちにさせてしまうこともある。観光立国を目指す日本にとってイメージダウンにもつながる恐れがある。
「你退出(あなたが出て行け)」。大阪市北区の梅田スカイビルに掲げられた案内板が1月下旬、中国の交流サイト(SNS)で話題となった。
案内板は、40階建てで屋上から大阪の市街を一望できる人気スポット「空中庭園展望台」からの帰り道に設置されていた。日本語での案内は「お帰り口」。SNSでは「中国語を尊重していないの?」など厳しいコメントが飛び交い、2月までに撤去した。
ビルの管理会社によると、案内板は混雑時に案内スタッフを配置できないエリアなどに臨時に設置した。通常は翻訳会社を通じて看板などを製作しているが、臨時用のためスタッフが翻訳ソフトを使って作成したのが誤訳の原因となった。
管理会社の担当者は「『退出』という漢字が使われていたため違和感はなかったが、まさかこんな意味になっていたとは……」と悔やむ。
出典:日本経済新聞 (最終閲覧日:2019年5月13日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44638630Q9A510C1SHA000/
こういった誤訳は日本だけではなく、海外でもよく見かける光景だ。筆者もお隣の国、韓国や中国でよく見かけた。また、東南アジアでも日本人観光客のために書かれた日本語の掲示に誤訳があるとSNSで指摘されることも少なくない。
まとめ
こうした誤訳が話題に上るのも、日本が「洗練された国」と認識され、訪日外国人たちはその洗練されたサービスを期待して日本を訪れているという表われかもしれない。今回、誤訳の話題もオンライン上で非常に話題になったという。ネガティブな情報もポジティブな情報も一瞬にして広まるのが、現代の強みでもあり、弱みでもある。まずは、技術が向上しているとはいえ、安易に機械翻訳に頼ってしまうのではなく、ネイティブによるダブルチェックを行うなど、「おもてなし」の心を持って翻訳にも望むこと。そして、SNSをうまく活用して正確な情報を訪日観光客に届けることで、リスクを最小化し、メリットを最大化する。そこに日本のサービスのブランド力を高め、インバウンド集客、訪日外国人集客へとつなげる秘訣があるといえる。